「旬の新じゃがに、名残の甘夏。イサキも、求める品質のものが明日には揚がらないかもしれない。」
いましかない、いまだからこその美味しさを静かに語る塚田シェフ。同じ品目を仕入れても、その時々で、色も、大きさも、形も、あらゆる条件が変わるのが常。その日の食材の状態で、下ごしらえやメニューそのものが変わるときも。コースのメニューの表紙に、その日の日付のみが刻まれるのは、そういった背景から。また、その日にご来店くださったお客様のひとときこそがメニューの主題。その日のお料理でそれを引き立てたい、という想いも込める。
料理人の仕事をはじめたばかりの頃、つい「このサイズで」「もう少し大きめで」と規格の話をしてしまっていたと話す、塚田シェフ。
「でも、自然のものだからこそ、揃ってないのが本当はあたり前なんですよね。」
食材の調理にあたっては、可食部以外も活かすことを考える。グリーンピースの鞘でつくったパンナコッタをコースの序盤に、終盤で実を使った料理を。ひとつの食材にいくつもの顔があることを、お客様に感じていただきたいという想いからだそう。
終わりとはじまりが出会う一皿
甘夏の旬も、もう終わりに差し掛かる頃。一方で、イサキのように梅雨に向かってさらに美味しさを増す食材もある。終わりゆくものと、はじまりの交わる味。
「一つのお皿で、"旬の幅" や四季の豊かさが感じられることは、よく意識しています。じゃがいもと柑橘とバジルの組み合わせは、ヨーロッパの古典料理にもよくあるんですが、ここでしか食べられないものをという観点で、ドロカワらしくアレンジしました。」
和食では、名残の食材を惜しみながらコースの最後に据えることが多いなか、塚田シェフは、あえて逆に並べる。「レストランは、Restと付く通り、明日への活力を充電する場所だと思うんです。なので、ここで食べるものを通して、お客様には明日に向かって元気になっていただきたいので。」
レシピ
「 イサキと新じゃが、柑橘の温菜 」

イサキ・甘夏(八朔)・新じゃが(ニシユタカ)・バジルの温かいひと皿。
材料
※数字はおおよその重量比
- イサキ(伊佐木)……3
- 新じゃが(ニシユタカ)……2
- 八朔、または甘夏(熟れすぎておらず粒の食感の強い柑橘)……1
- バジルペースト……少量
- 木の芽……適量
- カットレモン、オリーブオイル、塩……適量
素材選びのポイント
- イサキ……なるべく脂がのって、鮮度の良いもの
- 柑橘……八朔がおすすめですが、他の柑橘でも代用可。粒がしっかりして、酸味の強いもの

作り方
1. バジルペーストを用意する。市販のものか、なければバジルを5秒だけ茹でて氷で締め、おろしニンニク適量とともにミキサーにかける。
2. イサキの下処理。塩をして、ペーパーで巻き、余分な水分を抜いておく
3. じゃがいもを茹でる。皮を剥いて小さめの角切りにし、塩水で茹でる。塩分濃度は「お茶漬けくらい」が目安。
4. ほろっと崩れるくらいになったら火を止め、そのまま休ませておく
5. 柑橘をほぐす。八朔は果肉が崩れないようにほぐす。果汁が多く出たら、ペーパーで余分な水分をふく
6. ほぐした果肉を、塩・バジルペースト・オリーブオイルで和える。バジルはしっかり効かせる
7. イサキに切れ目を入れる。可能なかぎり細い切れ目を。皮を一度炙って冷ますとギュッと固まり、切れ目が入れやすくなる
8. 食べやすい大きさにスライスし、皮の面だけを炙る
9. じゃがいもを温め直す。ザルでしっかり水を切る
10. 盛りつける。じゃがいもが温かいうちに器へ
11. イサキにカットレモンを適量絞る

12. 和えた八朔または甘夏と木の芽をのせる

13. 仕上げ。八朔または甘夏の皮をツイストし、精油の香りをまとわせる

ご家庭でつくるときのコツ
・とにかく温度。お寿司のネタとシャリがふわりと絡むように、今回もじゃがいもが温かい状態で、イサキを乗せること。事前に、イサキを切っておくと焦らないです
・イサキが手に入らないときは、タチウオやサワラでも可。柑橘は、果肉のしっかりした甘夏やグレープフルーツなどでも可
・木の芽についてもお好きなハーブを添えられてもOKです

イサキも、甘夏も、新じゃがも、今この瞬間がいちばん美味しい。
「今しか、ない」一皿を、どうぞご家庭でもお試しください。
店舗情報
MELOMOSO da dorokawa(メルモーゾダドロカワ)
■ 〒810-0014 福岡県福岡市中央区平尾2-21-18 トーカンマンション平尾 102
■ 092-522-6232
■ 12:00~14:00 / 18:30~22:30(最終入店19:30)平日
18:00〜21:00(最終入店19:00)土祝日
日曜定休 予約制
■ テーブル席・カウンター席 全席禁煙

文・写真: MINORI FOODSCAPE



