真黒茄子のお椀

真黒茄子のお椀

『料理屋 あるところ』 店主 平河さん

優しさと、とろみと。晩夏にいただきたい、茄子のお椀。

佐賀県唐津市鏡(かがみ)。畑や古民家を横目に細い道を抜けていくと、「料理屋 あるところ」がある。店主の平河 直(ひらかわすなお)さんは福岡に生まれ、いつかは田舎で暮らしたいと福岡周辺を探すうち、唐津の場所に出会ったという。東京と福岡であわせて10年ほど和食の道で修業を重ねたのち、2015年に「料理屋 あるところ」を開店。昔話の語り出し「むかしむかし、あるところに」からきているという店名には、素朴なものこそ日本の料理らしい、という平河さんの人生観が宿る。

「あの優しいとろっとした感じと、それを鰹出汁でとろみをつけたものと一緒に食べていただく、その食べ方がいいなと思っていて。すごく自分の好きな料理で、夏は食べたくなる。」

と店主の平河さん。

厨房に立つ店主の平河さんの後ろ姿

いまおいしいものを先に集める

東京で懐石料理の修業をしていた頃は、まず献立を立てるところからはじめるのが当たり前だったという。この順番でこういうものを出したい、と決めてから市場へ行き、必要な材料を集めてくる。自分がつくりたい料理のために、食材を探す組み立てが、基本のお作法だったそう。

一方、唐津に移ったあと、その順番が入れ替わる。ないものはないし、季節が過ぎれば、また来年。だから、「いまおいしいものを先に集める」というところからはじまるのが、いまの料理。

「材料はこれがあります、となった状態で、これをどうやってコース料理にしていこうかな、と考える。割と受け身というか。材料があって、それを僕がなるだけ美味しい状態にする。そっちのほうが結構面白くて、自分は。」

小ぶりで丸みのある固定種の茄子「真黒茄子」1

そんな考えに至るきっかけとなったエピソードがある。唐津に来て1、2年目のこと。そろそろ出る頃だろうと、道端でリアカーで野菜を運ぶおばあさんに「そら豆はもうあると?」と聞くと、「あんた畑行ってみ。花しか咲いとらんよ」と呆れ顔。唐津にきて、地のものでやるぞと意気込みながら、畑も見ずに旬を語っていた自分が恥ずかしくなった、と平河さんは振り返る。

インタビューに応える平河さん

現在は、店の裏に畑があり、「収穫のためというより、花が咲き、実がつき、種になるまでを眺める場所」と話す。花を咲かせた茗荷や、とう立ちしたレタスは、店先に並ぶことのない姿。畑での体験が、そのままそのひと皿のヒントになることもあるという。

「自然の中から何に価値があるかを取るのは僕次第、みたいなところがあるのが、やっぱり幅が広いよなと思いますね。」

最近は、その味の奥深さや料理人の腕を試すような味を引き出す難易度から、在来種や固定種の野菜にも関心が強いという。いまも、近くのおばあさんの畑から種を分けてもらって、少しずつ育てているところ。いつかお客さまの皿まで届けられたら、と話す。

厨房に立つ平河さん

ひと手間が生む、翡翠色の茄子のとろみ

今回ご紹介するのは、固定種の茄子「真黒茄子」を活かした一品。茄子を揚げて出汁に浸し、お椀に仕立てる、というシンプルに見えて、繊細なお料理。あるところのコースにも並ぶ料理で、平河さん自身、夏になると食べたくなるといいます。

油を使い、一晩おく時間も要る。家では少し手のかかる料理です。それでも「その手順じゃないと出ない味がある」と平河さん。これから旬の新生姜とあわせて、ぜひ一度つくっていただきたいレシピです。

仕上げに載せる新生姜をすりおろす

「 真黒茄子のお椀 」

材料(4人分)

真黒茄子(しんくろなす) 4本
新生姜 1かけ
揚げ油 適量
つけ地
かつお出汁 480cc
薄口醤油 60cc
みりん 60cc
吸い地
かつお出汁 360cc
薄口醤油 小さじ1
小さじ1/2
水溶き葛粉 大さじ1

※つけ地の割合は、かつお出汁:薄口醤油:みりん=8:1:1です。

※つけ地に一晩おく時間が必要です。前日から仕込んでください。

作り方

  1. つけ地をつくる。かつお出汁・薄口醤油・みりんを合わせて火にかけ、一度沸かしてから冷ましておく。
  2. 茄子はガクのまわりにぐるりと包丁を入れてガクを取り除き、皮をむきやすくしておく。

手順2:茄子のガクのまわりにぐるりと包丁を入れる

  1. 茄子のお尻から竹串を刺して穴を開け、空気の抜け道をつくる。さらに横方向にも竹串を刺し、揚げるときに油の中で回転しないようにする。

※穴を開けずに揚げると、茄子が破裂して大変危険です。必ず穴を開けてください。

手順3:茄子のお尻から竹串を刺して穴を開ける(1/2)

手順3:横方向にも竹串を刺し、油の中で回転しないようにする(2/2)

  1. 170℃の油で茄子を揚げる。途中で上下を返し、両面から火を入れる。指で挟むとつぶれるくらいやわらかくなったら揚げ上がり。

手順4:170℃の油で茄子を揚げる

  1. 揚げた茄子はすぐに氷水に取り、皮をむく。

手順5:揚げた茄子をすぐに氷水に取る(1/2)

手順5:氷水の中で茄子の皮をむく(2/2)

  1. 皮をむいた茄子をタオルにとり、余分な水分をおさえる。冷ましておいたつけ地に浸し、冷蔵庫で一晩おいて味を含ませる。

手順6:茄子をタオルにとり、余分な水分をおさえる(1/2)

手順6:つけ地に浸し、冷蔵庫で一晩おいて味を含ませる(2/2)

  1. 茄子をつけ地ごと温め、一口大に切ってお椀に盛る。

手順7:茄子をつけ地ごと温める(1/2)

手順7:茄子を一口大に切ってお椀に盛る(2/2)

  1. 吸い地をつくる。かつお出汁を火にかけて沸かし、薄口醤油と塩で味を整える。水溶き葛粉を加え、とろみをつける。

手順8:かつお出汁を沸かし、薄口醤油と塩で味を整える(1/2)

手順8:水溶き葛粉を加え、とろみをつける(2/2)

  1. 茄子を盛ったお椀に、熱々の吸い地を注ぐ。

手順9:茄子を盛ったお椀に、熱々の吸い地を注ぐ

  1. 仕上げに、すりおろした新生姜をのせて完成。

手順10:仕上げにすりおろした新生姜をのせる

ご家庭でつくるときのコツ

  • 揚げる前に、茄子のお尻から竹串で穴を開けて空気の抜け道をつくります。穴がないと油の中で茄子が破裂し、大変危険です
  • 横方向にも竹串を刺しておくと、茄子が油の中で回転せず、両面に均一に火が入ります
  • 皮は揚げる前ではなく、揚げてからむきます。先にガクのまわりへ包丁を入れておくと、氷水に取ったあとするりとむけます
  • 揚げ上がりの目安は、指で挟むとつぶれるくらいのやわらかさ。時間ではなく、手ざわりで見ます
  • つけ地は一度沸かしてから冷ますこと。一晩おく必要があるので、前日に仕込んでおくとスムーズです

揚げて、一晩つけて、熱い吸い地を注ぐ。少し手間がかかっても、このひと手間が茄子をごちそうに変えてくれます。ぜひ、ご家庭でもお試しください。

完成した真黒茄子のお椀

店舗情報

料理屋 あるところ

住所 〒847-0022 佐賀県唐津市鏡732
営業時間 11:00-15:00 17:00-22:00
定休日 不定休
予約 要予約 (電話番号: 0955-58-8898)
SNS https://www.instagram.com/_arutokoro_/

※本記事は2026年8月の取材内容にもとづいています。店舗情報・メニュー・価格は変更されている場合がありますので、営業時間・定休日は店舗のSNS等で最新の情報をご確認ください。

料理屋 あるところの内観

文・写真: MINORI FOODSCAPE

  • 特集&キャンペーンバナー
  • コラムバナー
  • レシピバナー
  • お米の安心一年便バナー
  • 自然栽培
    有機栽培中心

    青果は、自然栽培を中心に、有機無農薬など、自然循環を大切に育てられた旬の食材を取り揃えています。

  • 送料について

    お届け先エリア・商品サイズ・温度帯によって異なります。送料表はご利用ガイドにてご確認いただけます。

  • 配送について

    生鮮野菜などは、収穫から48時間以内のお届けをポリシーに、できるだけ新鮮な状態でお届けしています。

  • 定期便について

    月替わりで旬を楽しめる詰め合わせBOXほか、多くの商品を定期便でご利用いただけます。詳細はご利用ガイドにてご確認ください。